「まちづくりのすゝめ」とは…
市民活動やまちづくりを実践する時に役立つノウハウを学び、これからの活動に活かすための講座です。2021年度は「企画」「ブランディング」「デザイン」「発信・編集」のテーマに沿って、全4回開催していきます。
企画づくりのすゝめ
第一回目は「企画づくり」について。さまざまな企画を生み出している「千年夜市」代表の松岡まさたかさんを講師に迎えて、企画をつくるコツをお話ししていただきました。
集まった参加者は20名弱。すでに企画づくりに携わっている方やこれから何かを始めようとしている市民活動団体の方などが参加し、宗像市内はもちろん、遠方では八女市や佐賀の武雄市から足を運んだ方もいました!
松岡まさたかさん
松岡さんは福岡生まれの福岡育ち。親富孝通りのクラブの店長経験を経て、2013年にアジア諸国で見られるナイトマーケットをモチーフにした「千年夜市」を始めました。新型コロナウイルスの影響が出てからは開催できていませんが、現在は2021年の開幕式を検討しているところだといいます。
「ここにいるみなさんの中にはもうすでに『企画づくり』について体系的な部分は勉強してきた方もいると思います。そこで今日は『松岡の小さな世界』について、僕がこれまで体験してきたこと、考えてきたこと、大事にしてきたことをお話ししようと思います。偏った人間の僕が、偏ったことを話します。極端な話に聞こえることもあるかもしれませんが、一つでも深く刺さるものあればいいなと思ってお話ししますね」。
企画づくりに必要なのは“情熱”
松岡さんは「まず大前提として、いい企画のつくり方に、黄金比率なんてありません!」と断言。そしてご自身が千年夜市を始めた経緯を簡単に話してくれました。
旅が好きな松岡さん。アジア諸国ではどんな小さな街でもナイトマーケットが開かれており(一番有名なのは台湾なのだそう)、旅先で数多くの旅の醍醐味を味わってきたと言います。賑やかな屋台。初めて隣り合った人たちと談笑。旅のオススメスポットや、逆に行かない方がいい場所を教えてもらったり、一緒に飲んだ翌日に観光案内までしてもらったこともあるそう。予期せぬ人との出会いや経験ができるナイトマーケットにすっかり魅了さた松岡さんは、ある時思います。
「なんで福岡にナイトマーケットがないんだろう?」
「ないならつくればいい!」
そしてその情熱をもとに「千年夜市」を企画。5つほどだった店舗は最終的に50を超え、夏秋の3ヶ月間、毎週末中洲の公園に入れ替わりで出店が並ぶ夜市は「博多の風物詩」として取り上げられるようになりました。
自身が体験したアジア旅行がそのまま体現できた喜びはもちろん、スタッフ間で結婚するカップルが生まれたり、賑わいづくりの事例として佐賀県の武雄市でも実行委員が立ち上がったことも嬉しい波及だったと言います。
企画づくりについて
ここからは松岡さんが企画をつくってきた中で、大事だと思うことをお話ししていただきました。かなり盛りだくさんな内容でしたが、参加した原田さんがわかりやすくグラフィックレコーディングを描いてくれました。画像の内容と併せて簡単に内容を紹介していきます。
企画はどんどんやりましょう!
どんなに小さなことでもいいです。大それたアイデアじゃなくてもいいです。割りに合わなくてもいいです。ただし、絶対に自分が楽しいと思うことをやってください。それが軸にあれば大丈夫です。
ブサイクでもいいから一歩目を踏み出そう!
一歩踏み出したらあら不思議、何かが動き出します。動くと何かが、誰かがくっついてくるんです。ですが踏み出さなければ何も始まりません。
社会課題は無視しよう!
社会問題を考えることは大事だけど、解決しようとするとスケールが大きすぎますし、そもそも誰もが簡単に解決できる問題ではありません。「社会課題」ではなく、「自分課題」を解決しましょう!自分の愛するまちや地域、身近な人、顔の見える人のために動くことから始めましょう。
人は巻き込まないようにしよう!
これは意外!まちづくりに関する講座ではいかに地域の人を巻き込んでいくか、という話が出てくることが多いのですが、これについて松岡さんは次のように話します。
「人を巻き込むと、果たさないといけない責任が増えて、自分が不自由になります。本来やりたかったことができなくなってきます。巻き込むのではなく、ワクワクする企画を妄想して、それをどんどん周りに話していきましょう。同じようなことを考えている仲間がきっと出てきます。集まる仲間の数が多いと規模の大きな企画になったりします。」
多数決はだめ!
仲間で集まって企画を練り込んでいくとき、内部で企画の方向性が分かれる場合があります。その時にやりがちなのが多数決ですが、これは実は危険行為だといいます。
「10人いて意見が3対7に分かれたとき、7人が選んだ企画の方がいい企画なのか?これはとても危ういです。多数決で決めていいのは選挙とかです。3万人対7万人だったら、7万人に選ばれた人の方がいいというのはわかります。じゃあどうするかというと、やりたいことをプレゼン形式で発表しあってみんなで納得してから進めることをお勧めします。」
デザインはとことん選ぼう!
その企画のデザインは、「どんな人がどんな企画をやってるのか」を伝える「顔」の部分。外に向けたイメージの部分なのでもちろん集客にもつながるし、企画側のモチベーションが変わってきます。良いデザインは運営側を引っ張ってくれる力があるのだそうです。そして良いデザインを作ってもらいたいときには、安易に身近な人には頼まないことが大事だといいます。(身近にいるデザイナーさんに頼みたいときは別です。)
「勇気を出して有名なデザイナーさんに頼んでみましょう。高いかもしれませんが、予算がないなら正直に伝えることです。予算はこれくらいしかないけどあなたにぜひ作ってもらいたいんだという心意気は喜んでもらえますし、デザイナーのネットワークで他にいいデザイナーさんを紹介してくれるかもしれません。」
行政予算には頼らない!
行政の予算を当てにしないこと。予算がなくなったときに何もできなくなるからです。自分たちのお金でできるだけのことをやるのが大事。
協賛をもらおう!
協賛金をもらいに行った方が早い場合もあるそうです。その場合気をつけるのは、協賛に見合うことをすること。お金を出してよかったと思ってもらえる価値を提供することです。ここは企画が試されるところ。松岡さんがお勧めなのは「A社の水鉄砲を10万円分買い、協賛として10万円出してもらう」といった「相互協賛」です。
一つ、協賛で注意しないといけないことがあります。それは「企画内容は譲らないこと」!お金を出したんだからあれしろこれしろと、企画内容に踏み込んでくる人がいるそうです。ワクワクから始まった大事な企画の芽を摘まれないように、気をつけましょう。
打ち上げ、反省会はお早めに!
そして反省のしすぎもほどほどに。褒められた部分は素直に受け入れましょう。
最後に
たくさんの企画を実現させてきた松岡さんの経験に基づいたお話はどれも説得力があり、「なるほど」と深く頷いてしまうものばかりでした。
最後に世界遺産のある宗像市に向けて、2点企画アイデアをいただきました。
世界遺産に頼るな!
行政などでは特に、世界遺産に乗っかって街に人を呼ぼうと企画を立てがち。ですが、松岡さんは世界遺産で人は呼ぶべきではないと言います。
「どの地域にも素晴らしい文化や芸術は残っているもの。それらは地域の誇りだし大切にするべきなんですが、それで人を呼ぶべきではない。旅行者は結局のところ『楽しいことろ』に行きます。すでにある地域資源を呼び水にするのではなく、もっと自由でワクワクするような魅力的な未来の地域資源を、自分たちでつくっていきませんか?」
マチナカにこだわるな!
地方で特に見られるのが、駅前やすごく狭い中心地でのマルシェなどのイベント開催。これはすごくもったいないことだと松岡さんは言います。
「アクセスが良くないと足を運んでもらえないんじゃ…と不安になるのはわかりますが、こんなに広大な土地と自然があるのにどうして?と、東京の人からするともったいないと感じると思います。道の駅むなかたが良い例。全然中心地でもないけど遠方からたくさんの人が集まってきますよね。
魅力的なところに人は集まります。魅力的な環境の中で、自分たちのワクワクすることを、自由な発想で、ブサイクでもいいから小さく一歩踏み出してみてください。情熱さえあれば大丈夫です!」
あっという間に講座が終了
講話後の参加者からの質問タイムでは何人もの方から感想とともにさまざまな質問が寄せられました。
講座終了後も松岡さんの周りには人だかりが絶えません。
松岡さんの尖ったお話しから、参加者もさまざまなものを持ち帰ったようです。
☆今回の講座に参加してくれた方の声はこちら
松岡さん、貴重なお話をありがとうございました!
まちづくりのすゝめのご案内
今後の講座情報をお知らせします。
- 8/25(水)【ブランディングのすゝめ】
※メイトム宗像 8/10〜8/31の間臨時休館のため開催延期となりました - 9/22 (水)【Webデザインのすゝめ】