「まちづくりのすゝめ」は市民活動やまちづくりに役立つノウハウを学ぶことができる講座です。2021年度は「企画」「ブランディング」「デザイン」「発信・編集」の4本立てで開催しており、今回は2講座目の開催となりました。
動画編集のすゝめ
今回も平日夜にも関わらず定員を超える募集があり、遠くは大野城からの参加もありました。
参加者の半数は動画を編集したことのある人たち。動画編集ソフトの画面がスクリーンに映し出され、講座が始まります。
小才透さん
小才(こさい)さんは北九州市出身の34歳。福岡教育大学を卒業していて宗像に住んでいたこともあるそう。
東京ディズニーシーのキャスト、特別支援補助員、警備員、小学校教諭とさまざまな経歴を経て、現在は祖母の実家のある福津市津屋崎で「みんなの縁側 王丸屋」というゲストハウスの店主をしています。王丸屋の1階はオープンカフェになっていて、近所の人や観光で津屋崎を訪れた人がふらっと立ち寄れるコミュニティスペースになっています。
小才さんは津屋崎を紹介するYouTubeチャンネル、「ツヤツヤ津屋崎」を配信。チャンネル登録者は1600人を超えます。
「YouTubeを始めたのは3、4年前からですが、動画編集は大学生の時から遊びでやっていたので、編集歴は結構長いです。今日はこれまで動画編集してきた中で自分で見つけたポイントやコツをお伝えできたらと思っています。講師として話すのは初めてなので、近所の少年の話を聞くような気持ちで、肩の力を抜いて聞いてくださいね」。
はじめに
動画編集のソフトにもいろいろな種類がありますが、今回は「Premiere Pro(プレミアプロ)」というソフトを使っての説明です。
「最初に断っておくと、これから1時間ちょっと話を聞いたからといって、いきなり編集がバリバリできるようになるというわけではございません!」と先生。
動画編集はどんな機材を使って撮るか、何を使って編集するか、どの編集ソフトを使うかで全然違うのだそう。
確かに、Windowsで編集するのとMacで編集するのとでは細かい作業が変わってきますよね。なので今回は、基本的なポイントやコツ、心構えの部分をお話ししていただきました。
0から動画を作るときの流れ
動画を作るときのざっくり手順はこちら。
- 企画
- 撮影
- 保存
- 編集
- アップロード
動画を編集するためには「編集」以外の4つも考えないといけません。
①企画
「企画」というと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと、まずはどんな動画をつくりたいかということです。
「バラエティ風」
バラエティ番組のように撮るスタイル。
例:【最高かよ】福津市の鯛茶づけを食べまくれるイベントがあってるってよ!~光の道福津めで鯛フェア2021~(スイーツもあるよ)
「HIKAKIN風」
座って定点カメラに向かって話しながら撮るスタイル。
例:【新しいカメラ買ったよ【富士フィルム XT-2】
「Vlog(ブイログ)風」
普段の自分の様子を日記の記録のように垂れ流すスタイル。
例:【vlog】半年ぶりに復活を遂げた津屋崎の大浴場に行こう!【夕陽館】
「PV風」
CMのようなスタイル。
などなど。まずどんな動画を作りたいのかを考えて、YouTubeなどで自分の好みを見つけましょう。かっこいい系? おしゃれ系? 何かを紹介したいの? ただただ自分を見せたいの?などを決めて、そして観る!YouTubeにはたくさんの先輩方がいるので、その中から好みの先輩を見つけて真似するのからスタートするのがおすすめです。
②撮影
撮影には機材が必要です。たくさんありますが、まとめると必要なものは以下。
- カメラ ☆☆☆
- microSD ☆☆☆
- 三脚 ☆☆
- スタビライザー ☆☆
- 予備バッテリー ☆☆
- マイク ☆
- 照明 ☆
先生の個人的見解で必要なものほど☆の数を多くしています。☆2つは動画をどんどん作っていくつもりなら買った方がいいもの、☆1つはあった方がいいものです。
初心者の場合はカメラはスマホで構いません。
microSD は128GBあれば十分だそうです。
三脚はCanDoのスマホの三脚が優秀とのこと!
スタビライザーは画面が揺れにくくすることができる補助器具。動きながら動画を撮りたい方や、撮り続けていこうと思っている方は買った方がいいです。
途中でバッテリー切れて撮影を中断、という悲しい事態にならないためにも予備バッテリーもあった方がいいそうです。
たくさんありますが、選び方はどれくらいやりたいかによります。またここでポイントなのは、初めての人ほどいいものを買った方がいい!ということです。
「いきなりいいものを買うのはちょっと…」とためらう気持ちもあるでしょう。しかし先生曰く、下手に安いもの買うと「買わなければよかった」と逆に後悔することになるそうですよ。
他にもわからないことはたいていYouTubeで詳しく説明してくれている動画があるので、「YouTube 初心者 カメラおすすめ」など、必要な情報はどんどん調べましょう。
③保存
動画のデータはかなり重いので、データを保存する記憶媒体の外付けHDDや外付けSSDは必須。今はクラウドサービスというものもありますが、利用するのにお金がかかったり、保存できるデータ量が違ったり、サービスによっては画質が下がったりと内容はさまざま。よく調べて自分にあった保存方法を選びましょう。
保存について最大のポイントは、「一つの動画の素材は一つのフォルダでまとめておくこと!」そして「動画が完成するまではフォルダの外に移動させないこと!」
うっかり素材をフォルダの中から移動させてしまうと、動画が壊れたようになってしまうので気をつけましょう。
④編集
本講座のメインのお話です。今回一番教えたいのはこちら!編集作業の順番です。
これが編集作業の基本。長年動画編集をやってき先生が一番効率が良いと思う作業工程です。
(ⅰ)ざっくりカット
まずは「絶対にこれはいらないな」というところを最初から最後までどんどんカットしていきます。「えーと…」とか意味のない「間」とか。大体のソフトは元の画像データを残したまま編集できるので、後で「やっぱりあの部分必要だな」と思ったら復活させることができます。怖がらずにズバズバカットしていきましょう。
(カットの方法は使いながら自分で学んでいってください☆)
(ⅱ)字幕
字幕はソフトによって保存しておくこともできます。お気に入りの字幕はストックしていくと作業が楽になりますよ。
動画の最初から最後まで必要な部分の字幕を入れていきましょう。
(ⅲ)BGM
音楽は魔法です!音を入れることでグッと動画に引きつけることができるようになります。また音楽には伝えたいことを後押ししてくれる効果があるので、何かしら入れましょう。
これも動画の最初から最後まで入れていきます。
(ⅳ)効果音
これは好みです。バラエティー系にするなら入れた方がいいし、おしゃれにしたいなら入れない方がいい。ここぞ!というところや、聞かせたいところ、伝えたいところに入れると効果的です。
これも動画の最初から最後まで入れていきましょう。
(ⅴ)その他 飾り付け
集中線を追加したり、画面をアップにしたり。
そして最後に(ⅵ)書き出し です。
(ⅰ)〜(ⅵ)の順番で編集することで、何度も1から動画を見直すので必要なところとそうでないところがわかり、クオリティーも上がっていくのだそう。
(ⅱ)字幕・(ⅲ)BGM・(ⅳ)効果音はどこで手に入れるのかというと、これらはネット上でダウンロードすることができます。「フォント フリー」「BGM フリー」「効果音 フリー」などで検索してみましょう。
ここで注意するのは著作権!「商用OK」「好きに使ってOK」と書いてあるものが無難です。後のトラブル防止のためにもここは気をつけましょう。
編集で気をつけていること
【ポイント1】「見ている側が飽きない工夫」を
「かっこいい動画作りたい」「度肝を抜く動画を作りたい」などいろいろ希望はあると思いますが、まずは「飽きさせないこと」だけに全力集中してください!
だらだらしてないかな?この3秒間は必要?など。プロほど1秒、0.1秒にも集中して編集してるのだそうです。飽きさせない技を3つ教えてもらいました。
■飽きさせない技その1:同じ画は続けない
単なる説明でも、画を挟んだり、文字を真ん中に入れたり、アップにしたり、揺らしてみたり。ダレてるな、と思ったら工夫をする。
■飽きさせない技その2:説明字幕とおしゃべり字幕を効果的に使う
効果的に使うことで見やすさ、飽きにくさにつながります。
■飽きさせない技その3:意味のないことはしない
自分が手を加えた編集に説明ができますか?「何となく」「…ノリで」など、説明ができないことはしないこと。説明のできない編集をするとグダグダした動画になってしまうのだそうです。
【ポイント2】「誰も傷つけないようにしましょう」
見出しだけ見ると当たり前のことですが、悪口を言ったつもりではなくても、誰かを傷つけてしまう場合があります。「この表現は誰かを傷つけないだろうか?」ということを常に意識しましょう。
インターネットの世界では情報がすぐ拡散してしまうので、後のトラブル回避のためにもぜひ気をつけてみてください。
【ポイント3】著作権・肖像権
フリー素材の中にもたまに著作権侵害のものが混じってしまってることもあります。ダウンロードの前には注意して説明を読みましょう!
音楽に関しては、動画に音楽が入り込んでしまうことで意図せず著作権を侵害してしまうこともあるので、BGMが流れる店舗で撮影する場合などは要注意です。
映像に関しては、撮られたくない人が多そうな場所や子どもなどは特に注意しましょう。風景として街並みを撮る場合は遠くに映り込む歩行者の肖像権は侵害されませんが、撮られた人が嫌だと言えば撮ってはいけないのが撮影者の弱いところ。後で編集する自分が大変になるので、使わないに越したことはありません。
⑤アップロード
最後に作ったものをYouTube、その他SNSへアップロードするまでが動画作成の流れです。
最後に
「今日は動画編集を始めて2−3年後に気づくことをお伝えしていきました。動画編集は本当に時間がかかります。こだわればこだわるほど大変で、10分くらいのバラエティー動画を1本作るのに、多分8、9時間くらいかかっています。そんなに大変なのになぜ続けているのかというと、楽しいからです!というか、楽しくないと続けられません。僕は粘土細工やレゴブロックで遊ぶように、動画編集を遊びながらやっています。自分が撮って楽しいと思うものを撮ってください。」
「僕は動画編集を習ったことはないんですが、おそらく、動画編集は説明されながら、教えられながらやるとむちゃくちゃきついと思います。なぜなら使える機能が星の数ほどあるから!
触っていないうちからそれらについて教えられてもわからないし、とても覚えられないと思います。知らなくていいこともいっぱいあるし。なので学校で習うような「教科書暗記法」より、「壁にぶつかりながら調べる法」で習得していった方がいいです。
YouTubeには先輩方がたくさんいます。「動画のカットってどうするんだろう?」「字幕ってどうやって入れるんだろう?」とぶつかるたびにYouTubeで調べる。そうすると早く身につくと思います。まだまだ知らないことはいっぱいあるけどそれもワクワクしますよね。まずはトライしてみてください!」
優しい口調で話す小才さんの講座1時間はあっという間に終了。そして質疑応答に移りました。
Q & A
Q.先生はどんなハードで動画編集していますか?
僕はiPhoneとWindowsならわかるけど、AndroidとMacは専門外です。
今はスマホでも編集できますね。どこでも編集をできるのはメリットだけど、PCで編集するのと比べてやれることが5分の1で、5倍時間がかかると感じます。
Q.おすすめのソフトは?
iPhoneだと最初から入っているアイムービーがやりやすいと感じました。
僕が使っているのは月額5000円くらいのプレミアプロというソフト。
本気でやっていきたいと思っている方で、でも最初から月額5000円…と思っている方は、無料のソフトAviUtI(エーブイアイユーティル)がおすすめ。無料だけどかなり高機能!わからないことは「AviUtIのお部屋」というページで全て教えてくれるので、知識ゼロでも大丈夫です。
プロのYouTuberはプレミアプロかFinal Cut Proというのを使っているイメージですね。
Q.企画、撮影、編集…1人でやってるんですか?
全部1人でやってます、趣味なので☆やんなきゃいけないからやっているわけじゃないし。撮りたいものを好きなように撮って、好きなように編集したいので、全部1人です。
Q.1日の中でどれくらいの時間を動画編集に当ててるんですか?
一日中座ってるんで、ずっと触ってます。PC開いてたら、趣味なのでずっと触ってます。
Q.好きなYouTuberは?
毎日見てるのは「東海オンエア」。日本で一番再生回数の多い6人組の男たちがばかするやつです。恥ずかしいですね。(笑)
編集が好きなのは「SUSHI RAMEN【Riku】」。その人の編集の仕方は影響されてます。YouTubeはオリジナリティーよりもパクリの方がいいですよ!そのまま真似するのが一番の勉強になります。動画編集のスタートは動画を見るところから!
あと「料理研究家 リュウジのバズレシピ」ていう料理動画は結構見てます。
いろんなものを見ることが参考になるので、好きなユーチューバーを見つけてください。
Q.撮影の向きは?
大事なポイントなのに言うの忘れてました!
時代は縦動画が主流!TikTokの影響か、縦で1分以内のもの。流行らせたければ縦がいいでしょうね。YouTubeとInstagramはリールという機能があります。アプリによって使い分けましょう。縦動画は横動画以上にいらない部分を削るのが大事ですね。けど僕は横動画が好き。
小才さん、楽しい講座をありがとうございました!