「欲しい環境は自分で作る!」講座
秋の行楽シーズン、天気にも恵まれたLDA2017 2限目は少し足を伸ばして大島へ。
フェリーに乗り込むとすっかり遠足気分。参加者のみなさんもとってもいい笑顔です!
世界遺産登録の影響もあってか、フェリーはほぼ満席でした。
ゲストに会ってお話を聞く前に、大島は一体どんな島なんでしょう?
ということで、まずは大島を体感してみます。
大島ターミナルにて手配していたバス2台に乗り込み、大島内をぐるっと一周観光しました。
途中、風車展望所ではバスを降りて、砲台跡まで歩いてみました。
写真正面に見える小高い丘はトーチカと呼ばれる鉄筋コンクリート製の防御陣地です。玄界灘を望み、第二次世界大戦では弾薬庫としての機能があり、敵部隊の侵攻を留まらせたり、自軍の拠点防御の役割をしていたそうです。
その先には砲台跡が残っていました。現在では晴れた日に沖ノ島が望める絶景スポットですが、戦争遺産として歴史を繋ぐ場所でもあるのですね。
今回は時間の関係上多くは回れませんでしたが、渡島できない沖ノ島を遥拝するために設けられた沖津宮遥拝所や、岩の海岸、岩瀬に降りることもできます。(大島ターミナルと反対側)
他にも見所はたくさん!
参加者のみなさんにはまたの機会にゆっくり大島巡りをしてもらえたらと思います。
本日の会場、『musubi cafe』へ
大島ターミナルから海岸沿いを900mほど右に周回すると、緑の芝生に可愛いらしいパラソルとデッキが見えてきました。
2016年12月にオープンしたmusubi cafeです。
「こんにちは〜」と出迎えてくれたのは今回のメインゲストのフィッシャーマンキッチン・豊福未紗さん(以下未紗さん)と、musubi cafe店主の草野結実さん。
先に注文していた漁師サンドとmusubi cafeオリジナルのドリンクを早速出してくれました!
漁師サンドのフライは前日に獲れた魚により種類が毎回違います。今回はプリップリのヤズ(ブリの若魚)でした!
オリジナルドリンクは柑橘爽やかな甘夏シェイクと甘夏レモネード。さっぱりしてごくごく飲んでしまいます!
食べる前に写真撮影は欠かせませんね。
未紗さんを囲むようにして座り、講演スタートです。
今回はできたてのサンドを頬張りながらの講演という贅沢スタイル♪
和やかな雰囲気の中で心もお腹も満たしたい!というこちらの要望に快諾いただいての実現でした。
未紗さんstory①:大島と低迷期
豊福未紗さんは宗像市久原出身。漁師として働く旦那さんと結婚したのをきっかけに大島に移住しました。
30代に入ったばかりですが3人娘を育てるたくましいママです。
笑顔が素敵でイキイキしている未紗さんですが、実は8年もの「自分喪失期間」があったとのこと!
今回の講演で着目してもらいたいのがこの「経緯」。
とてもそんな過去があったなんて思えないほど楽しそうにお話しする未紗さん。どんな経験を経て今の彼女があるのでしょうか?
島の環境
大島の中のことを「島内」、島の外のことを「島外」と言うそうなのですが、島内には島外にない生活環境があったそう。
「島外では、仕事環境、子育て環境、学校や習い事の環境、地域環境と、生活する中でそれぞれ環境が分かれていて、それぞれに自分の居場所がありました」
島外に住む人にとってはこれはごく普通のことですよね。ふんふん、それで?
「だけど、島内はそれが全部一緒。つーつーだったんです」
「人との距離が近すぎるというか。例えば、ちょっと今日はきついな、と思って近所の人に挨拶しなかったことが地域で広がっていたり、仕事での出来事が学校で知れ渡っていたり。いつも誰かに監視されているようで人の目が気になってしまって、すっかり自分らしさを出せなくなってしまいました」
イキイキした人を見ると妬ましく思い、自分がそうなれていないことが面白くない。
そしてそんなことを思ってしまう自分に嫌気が差すという悪循環に陥っていたそうです。
人のことを信用できず、一人で全部責任を背負おうとしていた未紗さん。苦しくなっていたその反動は、次第に子どもに向けられてしまいます。
子どもだからぐずるし、身体もまだ強くない。子どもは何も悪くないのに。
無意識に、何か都合の悪いことはみんな周りのせいにするようになっていました。
そんなある日、文句ばかりの未紗さんを見かねた友達が喝を入れます。
「あんたが選んで大島に嫁いできたんやん。ぐずぐず言うな!」
そこで目が覚めた未紗さん。
「そっか、私が自分で選んでここにきてるんだ。子どものせいじゃない。
これは自分がどうにかしなければ」
未紗さんstory②:自己問答と新しい発見
「私は自分で選んで大島に来た。一体自分は何がしたいんだろう?」
それから未紗さんはこれについてとことん追求します。
「子どもは子どもらしくしてほしい。けど私はママをしながら、楽しみながらわがままに仕事をしたい」
一人の人間として仕事をすることで役割を感じ、気持ちを充実させたい。
でも、子どもとの時間も大切にしたい。仕事も大事だけど、そのために子どもを犠牲にはしたくない。どうしたらいいだろう?
未紗さんは考えます。
仕事もしたい反面、現実には3人目の子が生まれ、なんとかこなせていた子育てはいよいよ手が回らなくなっていました。
忙しくて困っていたそんなある日のこと。
「上の子の学校行かないかんのやろ。下の子見とってやるけん、行ってき」
なんと、近所の人が子どもを見ていてくれるというのです。
最初はびっくりして躊躇しました。けれど、そうして差し伸べられた手を恐る恐る握り返してみると、すごく温かかいことに気付きました。
「え?人ってこんなにあったかいの?」
信用できないと思っていた島の人たちは本当はすごく温かく、みんなして未紗さんを助けてくれました。
募っていた周りへの「不信感」は、素直に助けを求めることで「感謝」へと変わり、窮屈だと思っていた島は180度違う素晴らしい島になったのです。
「島の人は何も変わっていない。自分がそう思ってただけだった」
未紗さんstory③:漁師サンドができるまで
自分が素直になることで島を誇りに思うようになった未紗さん。
その頃大島には飲食店がほとんどなく、外から島に来た人たちは口々に「どこか食事できるところありませんか?」と食べ物を探していました。
※そう、大島にはコンビニがないのです!
「せっかく自分たちが誇れる島に来てもらっているのに、食べ物がないんです。私たちは『お腹すいた難民』って呼んでましたけど(笑)、そんな人たちに何か提供できないかなって思うようになって」
夫が漁師の未紗さん一家。たくさん採れた魚は内臓をとってフライにして冷凍保存していました。
これが何かに使えないだろうか?
それから、漁師サンドが実現するまではさほど時間はかかりませんでした。
自分がやりたいことを軸に動いていく中で、あれよあれよとことが運んだのです。
▽サンドのパンは社会福祉施設の「くすのき園」さんで作られる無添加のものを使用
▽販売用軽ワゴンはDIY好きのお叔父の改造により完成
▽中に挟むフライの魚は「あるもの」を使い、種類を統一しないことで材料に振り回されない営業を可能に
▽営業日は「不定休」であくまで「子ども優先」
▽売り上げ目標「なし」!
こうして、「働く個人」として、「子どもを育てるママとして」、「来島者への需要を満たすお店として」、全てを兼ねそろえる形でフィッシャーマンキッチンの「漁師サンドを販売する」という仕事は生まれたのでした。
教えて!実際のところ
Q.開業に反対する人とはいなかったんですか?
「いましたよ〜。『子どもの都合でお店を開けたり閉めたり、サービス業なめてるの?』とか、『週末の方がお客さん多いんだから、売上のこと考えたら土日はお店を開けるべき!』とか、周りでいろいろ言う人達はもちろんいます。
けど基本的には、聞かないようにしてますね(笑)
だってその人はその人の常識の中で言ってくるから。そればかり聞いていると、大切なものが見えなくなってしまう。足を取られてしまうんです。
それ以上に、『いいね!』って言ってくれる応援者の声を大事にして、自分が楽しむことを最優先にしてます!」
Q.一番下の子は一緒に営業のワゴンに乗っているとのこと。営業中に子どもが泣いてしまったら?
前は『仕事しないといけないのに』と思って子どもに我慢させていたんですけど、それはやめました。
けど、意外とそんなときは『いいですよ』と理解してくれる人が多いことがわかってきたんです。
するとまた、それが自分の中で「人ってあったかいんだ」という気づきと感謝に変わります。
そうやって、さらに人のことが好きになっていきました」
キーワードは、「ま、いっか」
困ったら周りの人を頼ればいい。
できないときは「できません」「助けてください」と素直に言う。
未紗さんやmusubi cafeの結実さん、ありがとうございました!