「地域活動への扉が開くとき ~私が見つけた歩み方~」/平田裕貴さん(むなかたJLC 代表)

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地域活動への扉を開くのは、特別な人だけではありません。『何かが変わるきっかけ』さえあれば、誰でもその一歩をふみ出せるのです。 今回ご紹介するのは、2024年4月、市民活動団体「むなかたJLC」を立ち上げた平田裕貴さん。2023年4月、地域の総会で子ども会の継続危機などについて意見された方の言葉が、彼の心に火を灯します。新興住宅地が増え、人とのつながりの希薄化を背景に、「自分にできること」を歩きながら始めた平田さん。その歩み方には、地域を変えるヒントがいっぱい詰まっています。

一歩をふみ出したきっかけ

平田さんは、2023年春頃、市民活動・NPOセンターの窓口へ「何かしたい」と相談に来られましたね。一歩ふみ出してセンターへ足を運ばれた“きっかけ”は何だったのでしょうか?

平田さん:

どこの自治会も大体総会が4月くらいにあって、僕も暇だからいつも出席していて。コロナも明けて数年経って、地域のいろんな活動報告を聞いてて、「最後何かありませんか?」っていう時に、ある地域の人が「最近子ども会の報告とか全然聞かんのやけど、どうなっとんかいねぇ。自分たちみたいに地元で昔から住んでる人と、新興住宅地に住む人たちとの交流もないし、顔もわからんけ名前もわからん。これってどうなんかね。」って言ったんですよ。

その方とは知り合いではないけれど、いつも発言されてる人がいるなぁーくらいの認識程度で。でも、それを聞いたときにコロナのこともあったけど、自分も引っ越してきて新興住宅地に住む人で、今のこの区画の人たちはわかるけど、 そこを抜けたら全然同じ組、隣組でもわかんない。今まで僕もそんな気にする方でもなかったんだけど、その方の「地域とのつながりが薄れている、これでいいのか?」のひと言にハッとさせられたというか。自分もずっとこの地域で生きていくんだったら、 少しは地域のことを知っとかないと怖いなって。

ちょうどこの総会の前の3月、春から中学生になるうちの子が、地域の子ども会を卒業したばかりで。その時に、委任状が回ってきたんですけど、それが「子ども会の活動をずっと準備会で3年くらいやってきたけど、みんな非協力的。もう子ども会を無くしていいですか?」という内容だったんです。

その委任状も蓋を開けてみると、100軒近く配布したのに30軒くらいしか回答がなかった。残りの70軒は我に関せず。結局その時に担当していた子ども会の人たちは、「みんな興味を持っていないのに、もういいんじゃない?」って、子ども会を無くすことになったという経緯を聞いて。僕、そんなことになってたなんて、全然何も知らなくて。総会で発言した方の「これってどうなんかね?」っていう言葉で、「子ども会を存続するしかない、自分は関係ないじゃいけない」と決意したんです。

総会の後、すぐ区長に電話して「僕、子ども会つくりますよ。役員もやりますよ。」って話をしたら、区長が前の準備会のメンバーの方や地域で子ども向けの活動をしている方たちを集めて会合を開いてくれたんです。皆さんの話を聞くと、子ども会は対象となる子どもたちの名簿を市や学校からはもらえないから、連絡する術がないと。それで何か動かなきゃと思って、何か情報が欲しくて市民活動・NPOセンターへ相談に行きました。そこからどんどん情報を集めて、調べて、吸収していったのがスタートです。

足ふみしながらも動き出す

地域活動への扉を開けて、実際に動き出した平田さんですが、子ども会再会への道のりはスムーズにいきましたか?

平田さん:

動き出したものの、最初の半年間は何もしきらなかったんですよ。2023年4月から夏ぐらいまで、考えることがものすごくいっぱいあって。「お金はどうしよう、活動はどうしよう、メンバーはどうしよう…」いろいろ考えたけど、一歩ふみ出しきれなくて。その時、ちょうど区の役員をしていた、自分より少し年下の男性に「こんなことやりたいんだよね」って伝えたら、「サクッとやったらいいじゃないですか」って簡単に言ってくれたんですよ。その彼のひと言で、「じゃあやってみよう!」って。動き出すことができました。

「じゃあやってみよう!」の第一歩は何をされたのでしょうか?

平田さん:

そうですね。まず、いきなり赤間地区コミュニティ・センターでワークショップの開催を企画しました。何もつながりはないけど、宗像で活動している作家さんに講師をお願いしました。初めましての僕からいきなり言われて驚いたと思うんですけど、引き受けてくれました。当日は告知もうまくできず、結局、後押ししてくれた彼の姪っ子さん含め4人くらいの参加。勢いで開催してみたものの、講師へのお支払いなどお金のことだったり、告知をするタイミングだったり、うまくいかないことだらけ。でも、とてもいい勉強になりました。

あとは、足踏みしている間も畑は耕してたんですよ。子ども会ができるかできないかはわからないけど、もしできたら、みんなで芋掘りしようと思って。この畑も、土地の所有者の方に想いを伝えたら理解してもらえて、心よく貸してもらえました。その方から、「この時期にこれを植えたらいいよ。」とかいつも本当にいろいろ教えてもらってます。

安心できる場をつくるために

動き出す中で、周りの方の反応はどんな感じだったのでしょうか?

平田さん:

周りからは、「自分の子どもはもう中学生になって関係ないのに、なんで子ども会を必要としているのか?」との声が届くようになりました。 というのも、僕は「子ども基本条例では、18歳未満の子どもがすべて子どもと言ってるんだから、小学生までじゃなくてもいいんじゃないか?」と思っていたんだけど、「宗像市の子ども会は小学生まで。」と決められていることを知らなくて。でも、中学校や高校に上がった子たちが、下の子たちの面倒を見るっていう循環がいいと思うんですよ。その子たちの居場所にもなるし、嫌なことがあってもここに来れば楽しい、そういう場所があちこちにあるのが救いになると思って。「中学生になったら部活とか塾で忙しいから来なくなる。」とか保護者は言うんですけど、来なくなったら来なくなったらで別にいいんですよ。でも、来る子もいるはずなんですよ。「それを決めつけちゃいかんくない?」って。

その頃から、市民活動・NPOセンター主催の講座などにも毎回参加してくれましたよね。

平田さん:

動きはじめてから最初の1年は、いろいろ勉強しました。子どものアドボカシー、意見表明に関する基礎講座をオンラインで全部受けました。地域の方ともつながらないといけないと思ったので、防災士の資格も取って。「中学生の親なのに、子ども会をする。あの人、大丈夫かしら?」とか、変な目で見られないように、子どもの活動をちゃんとしてるって安心してもらえるように。子ども会がきっかけで、子ども会の指導者資格(プレイリーダー)も取りに行きましたね。もう、あちこちとりあえず動く。動きまくって、考えて動いて、考えて動いて、ずっと繰り返しました。市民活動・NPOセンターが開催している講座に関しては、 自分の知識を深められるし、人の考え方や見方をあらためて学んでみようと思って。興味があるものは、講座は全部参加しましたね。

たくさんの学びの場に参加してみて、また一歩ふみ出すことができましたか?

平田さん:

実際は試行錯誤の毎日でしたね。2023年4月の総会でのことがきっかけで動きはじめて、ちょうど5月頃、市主催の「子どもの居場所情報交換会」に参加しました。その時一緒のテーブルには、すでに長く活動している、地域活動の先輩方が集まっていて。そこでの出会いもとても濃くて、足踏み状態からまた一歩進むきっかけになりました。以前から、皆さんのような活動ができたらなってふんわり思っていたから、よくInstagramとかで情報収集をしていたこともあって、話しかけやすかったですね。僕が「こういう子ども会みたいな団体をつくっていきたいんです」と想いを伝えると、もともと子ども会をやっていたという女性が、「レクリエーションなどを教えてもらう勉強会があるから行ってみたら?」と教えてくれて。すぐ、その勉強会へ参加しました。そこは、宗像と福津の方が集まる勉強会だったけど、宗像からは参加者が一人か二人で。でも、その帰りに声をかけてきてくれた方がいて、その方が「宗像市子どもまつり」の実行委員のメンバーだったんです。その後、コーヒー一杯付き合ってもらって、いろいろ想いを聞いてもらって。今は団体の監査役で入ってもらっています。仲間がひとり増えました。

団体を立ち上げる

平田さんにとって2023年はすごく濃い1年でしたね。子ども会の活動を再開させるために動き出した平田さんですが、そこからなぜ市民活動団体「むなかたJLC」を立ち上げることになったのでしょうか?

平田さん:

「子ども会を作るぞ!」って立ち上がったものの、「子ども会」は区の子どもたちが対象だから、小学校の子どもたちが来ても、友達の中に違う区の子がいたら、それは予算としては払えないみたいな問題が出てきて。分かるんですよ、区のお金だから。分かるけど、でもそんな都合、子どもに言ってもわからないし。そうやって、ああじゃこうじゃできない理由を並べてやらないんだったら、じゃあ、自分で団体を立ち上げてやろうって。実際、全国にジュニアリーダーズクラブという組織があって、そこの理想は、中高生の子どもたちがバルーンアートの研修やレクリエーションの仕方を学んで、その中高生が各子ども会に行って、レクリエーションを指導したり、小学生の高学年の子たちに子ども会の運営サポートをしたりする、子どもたち”が”主体で活動できる場をつくろうっていうもの。僕は宗像市に住んでる子どもなら誰でも参加OKの大きな子ども会みたいな組織を作ろうと思って、2024年4月に市民活動団体「むなかたJLC」を立ち上げました。

「子ども会」であれば活動資金は会費や地域からの助成などで運営ができたと思いますが、一から団体を立ち上げての活動に不安はなかったのでしょうか?

平田さん:

そうですね。活動するための運営資金はどこからどういうふうに捻出しようと悩んでいた時に、union67-情報交換会(2024年3月開催)へ参加する機会があり、ちょうどその時のテーマが「団体の補助金・助成金活用」についてだったんです。それまでは本当に漠然としか考えてなかったんですが、情報交換会で皆さんの運営のあり方などのお話を聞いて、いよいよ困ったら補助金の活用も検討しなくちゃと。でも、それまでは自分の力でまずはやってみようと思いました。と同時に、自分たちの自己資金も稼ぐための方法や場所も作らなくちゃと。

活動するときは青い服!

団体の活動のこと、平田さんのことを知ってもらうためにどんな工夫をされたのでしょうか?

平田さん:

やっぱり会いに行きましたよ、人には。動いて、挨拶して、連絡して、顔覚えてもらって。今も続けていますけど、地域のボランティアに積極的に参加したりしていますね。

あとは視覚的に覚えてもらうために、「活動の時は青系の服を着る!」と決めています。そうすると、服の色の印象だけで「今日活動の日ね」って覚えてもらえる。印象だけは残すように知ってもらうための工夫はしています。

青い色に決めたのは何かきっかけがあるのでしょうか?

平田さん:

以前は青い服とか着てなかったです(笑)。ゴミ拾いをする時に、たまたまその時に着ていた半袖の服が、嫁さんが買ってきた青い服だっただけ。違う服だったら分かりにくいけど、いつも青い服でゴミ拾いをしている人がいれば、声をかけてくれるんですよ。 ”ゴミを拾っている人=いつもの人” みたいな感じで。青いの服を着て認知してもらって、安心感を与えることを地道にやってます。

その成果も出て、「平田さん、赤間宿でゴミ拾ってました?」と声をかけてもらうように。「なんで分かりました?」って言ったら、「いや、青い服着てたから。」って(笑)

まさに“青い服”効果ですね!地域の方から徐々に認識されてすごいです。平田さんは、これまでも地域へ関心があったのでしょうか?

平田さん:

これまでは、関わらなくていいなら関わらないっていうタイプでした。

地域のことに関わり始めて、この1、2年、仕事とはまた違う視点が生まれたと思います。僕自身、ちょうど動き始める前の年から入院したり、いろいろあって。長期休暇を取らざるを得なかったことで、会社や仕事との向き合い方に大きく気持ちの変化があった。僕って世代で言ったら、もろ就職氷河期で。しかも一番最高峰じゃないかな。その当時のきつい経験を山ほど覚えています。そんな積み重ねが、今になって自分自身にとってのWellbeingを考えるようになったのかも。将来、仕事から離れても会社が僕の人生をフォローしてくれることはないだろう。でも生きている以上、僕はこの地域で生きていく。じゃあ地域のつながりをもっと大切にしていった方がいいのでは。…そんな考えにたどり着いて、地域に目を向けるようになったと思います。

体験活動の充実を目指して

これからの活動、どんな風に思い描いていますか?

平田さん:

団体の活動としては、一つは体験活動ってところに重きを置きたいですね。畑も子どもたち自身で耕すところから収穫までを体験させてあげたり。とにかく体験格差を無くしたいです。無くすために僕たちが教えてあげられることは教えたいし、させてあげられることは関係なくさせてあげたい。子どもたちに活動の場、体験の場をたくさん作ってあげたいですね。だから2024年9月に子ども祭り開催した時は、ワンコインで参加できるようにしました。実際、開催当日は参加者のドタキャンなどで大変なこともあったけど…。でも、5年後には絶対に寄付金だけ、協賛金だけで運営できるようにしたいと思ってます。子どもたちには無料で参加させてあげたい、というのが最終ゴールかな。それを見据えて、協力してもらえる人たちを増やしていく。ちょっとずつですね。二つ目は子ども会や学童などへ、レクリエーションの派遣もやっていきたいな。もう一個、僕個人がやってるボランティアの体験と遊びをミックスした何かができれば面白いだろうなと構想中です。

僕がやりたいことをやる団体ではないんで、メンバーが「こんなことしたら面白いんじゃない?」って言う声があったら形にして、「じゃあやってみようよ、どうやったらできる?」って投げかけるようにしています。その体験がやっぱり次のステップにつながると思うんで、大事にしています。

最後に、平田さんの活動の源は?

平田さん:

今は、地域で活動していたら青い服効果もあって、子どもたちが僕に気づいて、子どもたちから「平田さーん!」って声をかけてくれますもんね。あとは子どもたちの「楽しかった!いつもいろいろありがとう!」って言葉と笑顔。なんか活動していると、いろいろとごちゃごちゃ入り込んでくる時もあるじゃないですか。そういう言葉一つで、また原点に戻れますね。大事ですね。

今回紹介した人

プロフィール

平田裕貴さん
2024年4月、市民活動団体「むなかたJLC」を設立。地域の子ども会存続の危機をきっかけに、子どもたちへ体験の場、遊びの場づくりを行っている。またボランティア活動を通した学びやさまざまな経験を持たせる取り組みにも力を入れている。

取材日:2024.12.27


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